巡礼魂!
(the sprit of pilgrimage)

仏議  8


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二つの『龍潭寺』〜 静岡/浜松市 龍潭寺 〜
2010年5月2日
 私が住んでいる滋賀県の東部に『彦根』という街がある。江戸期に徳川家の譜代大名・井伊家がこの地へ入府し、「彦根藩」として35万石を領し、その後二百数十年の長い統治をおこなってきた。巡礼好きな私はこの地にある、井伊家の菩提寺「龍潭寺」を参拝することとなった。龍潭寺は、石田三成の居城・旧佐和山城の麓にあり、木々が鬱蒼と茂るなかに建てられていた。山門をくぐり、歩行用の地面には、石が敷き詰められ、(地面)全体が苔むしているため、まるで、人間が自然の一部に取り込まれるような錯覚すら感じられる。龍潭寺の参拝を済ませ、自宅で、龍潭寺の情報を検索していると、次のことが判った。それは、井伊家発祥の地である「遠江国井伊谷」に、井伊家の菩提寺『龍潭寺』があり、江戸幕府の開幕に井伊谷「龍潭寺」が分寺され、彦根「龍潭寺」が創建されたと書かれていた。・・・あれから数年経ち、私は静岡の名刹を訪れる機会を得、今回浜松にある「龍潭寺」にやってきた。浜名湖の北部だが、湖の片鱗を感じさせないほど、山深い場所に位置しする寺院は、行基開基の古刹で、地面や上空にかかる木々のせいで「緑一色」な整然とした景色を私に見せてくれた。寺域には、井伊家塁代当主の墓や位牌が安置されている。”彦根”と”浜松”〜2つの龍潭寺を拝観し私がこの2寺院に対し、魅せられたのは、「2つの寺院が、『一族の菩提寺』という共通言語で結び付けられ、時間という線を受け継いでいる」ことだった。景色がよく似た2つの寺院から推察すると、一族は「龍潭寺」という寺院へ深く帰依・信望した結果、井伊家の入府地へく「別の菩提寺」を据えるのではなく、遠江「龍潭寺」を分寺・造営することとなったのだと考える。これは、井伊家が「どこで生まれ」「どこで隆盛したか」を”寺院”というフィルターを通じて深く物語ろうとするもののようだった。まさに井伊家は「現存している2つの龍潭寺」を通じ、その物語を現在まで残すことに成功したのだと感じる。。。徳川家康の四天王として活躍した武将・井伊直政公が「井伊谷・龍潭寺」へ奉納した日本刀が存在する。この日本刀を眺めると、井伊の谷から、新たな新天地「彦根」へ、一族の過去と未来を抱え込みながら乗り込もうとする、気合いの入った直政公を思い浮かべるのだった。

スケールのでかい弁天島 〜 滋賀/長浜市 宝厳寺 〜  
2010年5月5日
 琵琶湖北部に「竹生島(ちくぶじま)」という小さな島があり、そこにある寺院には弁財天様が本尊として祀られております。お寺の池にある弁天島の”大きくした版”がこの島です。小さな弁天様が先か、この竹生島の弁天様が先か成立の前後は判りませんが、琵琶湖の小さな島を弁財天の寺院と作ろうとする発想に、昔の人々の信仰スケールの”でかさ”を感じ、脱帽してしまいます。現在、約3年にわたる『西國三十三か所霊場一斉御開帳』がラストスパート中で、私はその御開帳に便乗し、西國霊場に指定されている竹生島・宝厳寺へ向かうことにしました。晴天の中、彦根港から乗船し、40分ほど経つと、小さな島が見えます。島を這うような階段と真っ赤な建物が遠くから見えてきました。船着場へ着岸後、本堂へ向かう長く・急な階段を上がりました。本堂は”日本三大弁天様”に列せられる”大弁財天”様です。残念ながら、本尊様は直接拝謁することができませんでしたが、近江の戦国武将・浅井久政(浅井長政の実父)が寄贈した大きな弁天様が本堂隅に安置されていたりと、弁天信仰の雰囲気は抜群に理解できました。何か・・・この島の弁天信仰は、”毘沙門天信仰”とよく似ており、神か仏か不明瞭で独特な信仰スタイルを肌で感じました。また、私は普段の弁天様を「小さい池」の「小さな社」で見ておりましたが、その「小さな池」の「小さい社」に自身がいるような滑稽さも感じました。本堂を少し下り、葺き屋根の観音堂をめざしました。厳かな観音堂は、西國巡礼札所にも指定されている著名な観音様が安置されており、今回の御開帳で、直接拝観させてもらえる機会を得ることができました。堂内にはいり、内陣に足を踏み入れてみました。。。厨子が開かれており、内から端正な面持ちの千手観音様が安置されていました。私は、三十三間堂の千手様に似ている感想でしたが、もっと特徴を指していえば、”端正な面持ちの観音様”という表現が当てはまるのではないでしょうか?観音堂の本尊様と対面が終了し、船着場へ戻ろうとすると、階下から港へ続く階段と、琵琶湖の湖面が光に映えているのがみえました。神々しい・・昔の人々もこれを見て、ここに神様が宿っていると感じたのかな〜とおもいながら、短い船旅を締めくくりました。

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