巡礼魂!
(the sprit of pilgrimage)

仏議  6


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最強(?)の寺院〜 広島/尾道市 耕三寺 〜
2010年2月22日
 幼年時代に、「ウルトラマンタロウ」のTVを熱心にみていた。その中に「タイラント」という怪獣が登場する。この怪獣は、いままで、ウルトラマンに倒された怪獣たちの怨念が、体の一部一部となって合体してできており、ウルトラ兄弟をことごとく倒していくという、まさに「最強の怪獣」として私の脳裏に印象深い。 〜 広島県、 瀬戸内海にある小さな島(生口島)に「耕三寺」というお寺がある。寺の歴史は、そんなに古くはなく、昭和の資産家が私財を投じて創建した寺院という。寺域内に一歩入ると、至るところに極彩に彩られた、堂塔が寺域いっぱいに建てられている。それら堂塔は、どこかで見たような・・・日光東照宮の『陽明門』や平等院の『鳳凰堂』、四天王寺の『五重塔』に模した堂塔があちらこちらに・・最初はとてもふざけているように見えて、不快感を感じたが、寺域内を徘徊するとその不快さは一変した。寺域に設置されたあらゆる建造物は非常に真摯な仏表現を感じ、あらゆる形で仏教観を我々に提示してくれる、その仏教観こそ、「現在」「過去」「未来」であり、この”なんちゃって”に見えた建造物は、『過去から現在への表現方法に他ならない』〜と感じてしまう。さらに、この寺院のもっとも高い場所には、巨大な大理石を拝したオブジェが並び、その風光明媚さと相まって、「未来」を表現するにはピッタリの状況でもある。まさにこの寺院は単なる数寄者の道楽ではなく、創建者の信仰表現なのだと感じるに至った。そして、名建築物を集約したこの寺院に私は”最強の寺院(何に対して最強かはわかりませんが・・)”という称号を付けたくなったのである。

傷だらけの仏様〜 奈良/明日香村 飛鳥寺 〜
2006年7月23日
 斑鳩・飛鳥寺へ巡拝したときの出来事。いつものように本堂へ進み、これから本尊の前で手を合せる。寺院によっては秘仏のため、厨子前にあるお前立に拝することもあるが、当寺院は気前よく、本尊様はわれわれにそのご尊顔を拝することを許してくれた。ここの本尊様は「釈迦如来」で、存在でいえば、日本最古の仏様である。当時、この地には蘇我氏が創建したとされる大寺”法興寺”が建てられ、本尊はその根本仏として祀られていたという。写真集では見たことがあったが、初めて直接拝謁することに少し緊張がよぎっていた。本堂前へ進み尊顔を拝したとき、言葉を失う。。。そのお顔が痛く傷だらけのように見えたからだ。螺髪が抜けおち、頬の周辺には凹凸が点在する姿は、”傷ついた”と表現してもおかしくないほど。。。木造で手がない観音様や一部欠落した仏像を今まで数々見てきたが、それとは何か違う思いがよぎる。飛鳥寺の仏様が”傷だらけ”に見える原因は、経年により、多数の災難にあわれ、そのたび補修されてきているとのこと。かつてのオリジナルは仏様の一部分しか存在していないと聞く。木造と違い、銅仏であることも相俟って、補修の跡が傷のようにみえているのだ。しかし、その”傷のような補修の痕”が、まるで傷ついた祈り人の荷物を一身に背負った”傷”のようにも感じる。さらに言えば、その傷の存在が飛鳥の仏様をなんとかよみがえらせようとする人々の強い信仰なのだと感じる。まさに、痛々しい傷だらけの仏様は、「深く、長く人々がこの仏様を思ってきた」その象徴なのだ。それを感じたとき、いままでどんな寺でも感じ得なかった思いをそこに感じ取ることができた。あれから数年経った今、ふとあの仏様に会いに行きたくなった。 

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